ダダダダ

あれ、ダダダダぁーと、それであれがこれでな!でこうよ。

横山光輝 三国志(全60巻)をお年玉と貯蓄を投じて購入しようとしたが、足りなくて母からお金を借りようとしたら「先生に同意書書いてもらえ」と言われたあの頃

お題「初めて自分のお金で買った漫画は何ですか?」

こんなお題を発見してしまったので、強烈に心に刻まれている幼少期の記憶が蘇ってしまって、書かなければモヤモヤな気持ちを一週間ほど引きずる可能性があるので書き出したい。

 

私には二人の兄がいたので、自分でマンガを購入するという機会はあまりなかった。

ジャンプやマガジン、サンデーもコロコロやボンボンも兄や友人から廻ってきたもので済ませる日常であったので、あまり本を購入するということをしたことが無い。

ある意味、恵まれた環境、マンガを読むにはベストな環境で育った。

兄たちはかなりメジャーな本からマニアックな本まで購入してくる。

母も熱狂的な『手塚治虫』ファンであり、そのころまだ連載していたブラックジャックは母と兄二人が同時に購入して、3冊ある巻があった。

その頃の書籍は何十年も過ぎ、人生の苦難を色々と体験した今もまだ本棚にある。

捨てられない。

 

同じ巻は1冊で十分なのに2冊あるブラックジャックを見ると、今だに母を思い出す。

記憶とモノ、記憶と場所、記憶と音は、そこに登場する人物と結びついて初めて記憶に刻まれる、しかも強烈に、鮮明に。

 

その頃に家族から供給されるマンガは多種多様で、色々なジャンルであった。

エロいものもあったが、あまり精査されること無く私も読めた。

ただ、あまり我が家に無いものが『歴史もの』で、家族から供給されない。

家族は歴史ものをあまり買わない。

そして私は歴史ものが大好きである。

現在もヴィンランド・サガとか逃げ上手の若君とか、日常的に読むほど好き。

 

歴史が好きになるキッカケはたぶんですが、手塚治虫の『火の鳥

この本は歴史書では無いのですが、不死を求める歴史上の人物が登場するお話があって「正史ではどのような話なのだろう?」と思い、調べていたら歴史に飲み込まれた。

そんな幼い私が図書館で発見したのが『横山光輝 三国志

だた、全巻は揃っていない。図書館なのに。

図書館に漫画本があるのもどうかと思うんですが、全巻揃ってないのもどうかと思う。

 

三国志の魅力を語るとあまりにも長文になりそうなので怖いところではあるのです。

ただ、『横山光輝 三国志』に限定すると

読み手の空想するスキがある絵柄。

棒人間でのマンガを子供の頃に作成しませんでしたか?

あれに近い感覚なのかな?と思うのですよ。

押し付けてこない絵柄

戦争ものなのにアッサリしているシナリオ

私の脳内では物凄い戦闘シーンが描写されているのに、見ている絵はアッサリなんです。

横山光輝先生の本は本当にスキで、『その名は101』とか『時の行者』とか『史記』などを読み漁っていましたね。

ただ、あまり同学年からは同意を得たことはありません。

古めかしいんでしょう。

ドラゴンボールスラムダンクなどジャンプ全盛期で横山光輝の入る隙間は友人たちには無かったなと今になると思います。

 

そんな横山光輝三国志に魅せらた少年の私

母に頼んだんです。

三国志、全60巻を購入したいんです。」

母は本当に困惑したでしょう。

物凄く複雑な顔をしたのを覚えています。

いくらだったのか忘れましたが、私のお年玉などを貯めた貯蓄を全額フル投入しても、高額な値段だったでしょう。

子供に買い与える大義名分も無い。

父親に買ってあげた理由を説明出来ない。

ただ、母は「先生に同意書を書いてもらえたら良いよ」と答えてくれました。

私はその日から当時担任の先生に「三国志 愛」をプレゼンしました。

 

どれほど、三国志という歴史書が私の人生に影響を与えるのか?

どれほど、この本を購入したことによって私生活に影響があるのか?

そして、どれほど私がこの物語を愛しているのか?

 

ほどなく私の話術で同意書を書いてもらい、母に購入してもらいました。

現在、大人になって思い返すと、本当に理解のある母だったなぁと思います。

マンガ本に数万出してくれる親って普通じゃ無いのかなぁと。

 

三国志60巻が詰まったダンボールの正面に、描き下ろしっぽい横山光輝の絵が貼ってあって、物凄くワクワクしながら、絵を傷つけないよう母と一緒に開封したことを覚えています。

 

初めて自分のお金を全力で投入して購入しようとした漫画

担任の先生や母を説得してまで購入した漫画

自分の好きなものを隠さずスキだと言えた漫画

 

今、人生を謳歌し、喜び、悲しみ、憂い、嘆いた全ての土台を作ってくれた漫画購入でした。

 

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母は突然倒れました。

脳内で血管が詰まり、手術しても正常でいられないとのこと。

手術は成功しました。

ただ、病気は母から言葉と食事と体の自由を奪いました。

巨大な地震で日本中が揺れ、

東京で二度目のオリンピックが開かれ、

全世界で猛威を振るう疫病が発生しました。

母はそんな世間の喧騒をまったく気にすること無く、寝たままでした。

そして疫病のおかげで何年も私と会わないまま

静かに亡くなりました。

葬式も少なく、家族だけ。

火葬場で『ブラックジャックの母、兄二人が買った巻』を一冊だけ母の棺に入れました。

 

ブラックジャックが居たら、一日ぐらい母を正常にしてくれてたかもね。

そしたら、「あの時、三国志60巻を買ってくれてありがとう。私の人生にはプラスだったよ」と

「理解のある母で良かった」と

そう伝えたい。伝えたかったなぁ。