ダダダダ

あれ、ダダダダぁーと、それであれがこれでな!でこうよ。

やさしさは伝播する

 

やさしさ

 

やさしさを見ると心が癒やされる。

なにげない優しさはともても小さい行動だけれども、その人の心を癒やし周りに優しさを分け与える。

優しさが優しさを呼び優しさが伝播する。

そんな体験を最近した。

 

電車に乗っている時

杖をついた人が乗ってきた。

 

私の前方に座っていた高校生ぐらいの女性、リュックサックにありえないほどのぬいぐるみをぶら下げ、とても小さいローファーの靴を履いている。長いポニーテールがこのコの活動的な性格を物語っている。

 

その女性が素早く席を立つ。

「どうぞ~」

 

左手を前方斜め右に差し出し、席を譲ろうとするが杖をついた方は手で拒否する。

 

普通は出来ない優しさです気にするな~。と勝手に少女の心を憂う。

 

その女性は恥ずかしいやら気まずいやら嬉しいやら悲しいやらわからない笑顔で居心地悪そうにリュックを抱え、膝に手を置き、ちょこんと座った。

 

あなたの優しさは成就されなかったが、その優しさは私に確かに伝播した。

その行為は無駄では無いんだよ。

 

電車が混み合ってくる。

 

私の左隣に小柄なショートカットの女性が座る。

ケースに入った身長の半分ほどの楽器を持っており、楽器を足と足の間に挟んで楽器を固定して座り、リュックから取り出したタブレットに向かってガンガン絵を書き始める。

とても集中している。

集中しすぎて足の力が緩んだのであろう、足に挟んでいる楽器が前方に倒れそうになる。

私はとっさに逆ハンドで左手を差し出し楽器を止めた。

「ありがとうございます!」

隣の女性はとても素敵な笑顔で、私の目を直視してお礼を言った。

 

まだ私の前方に座っている席を譲ったポニーテールがよく似合う女性の行為は無駄になったが、その優しさが私に伝播し新しい優しさを生んだ。

無駄じゃないんだ。君の優しい行為は無駄じゃなかった。

私にほんの少しの優しい気持ちを与えて違う人を助ける行為に繋がった。

 

それに気がついてほしいなぁと思いながら電車を後にした。

 

駅からの帰り道、あたりは暗くなって来たので首からライトをぶら下げて歩いている私に、困り果てた顔の老夫婦が声を掛けてこられた。

「さくら治療院という場所をわかりますか?」

私は風貌やオーラや声の関係上、声を掛けられることはめったにない。

学校でも会社でもすぐに分かった。私と最初にあった人のイメージは大体「怖い」か「敵」かと身構える。何年も人間をやっていると表情だけで相手の気持ちがわかってくるものである。私に最初から気さくに話しかけてくる人は大体『変人』か『その筋の人』か『人タラシスキル持ち』である。

その私に話しかけてくる、ましてや質問してくるなど経験上あまり無い。

 

優しさが伝播し、私のオーラを多少優しくしたのだろう。

 

あの小さいローファーを履いた女性の優しさは無駄ではなかった。

あぁしつこいが気がついてくれたらいいなぁ。

 

グーグル先生に聞くと、歩いて10分ほどのところにその「さくら医院」はあるらしい。

ただ田舎道で暗いし、戦時中に破壊を免れたせいなのか道が入り組んでいる。

「あ、一緒に行きましょう。通り道だし案内しますよ」

正直、通り道ではない。

グーグル・マップをガン見である。

色々迷いながら、車も通れないような細い道を進んでなんとか到着した。

「あぁ20年前と変わってしまったけど、ここです。私達ココに住んでいたんですよ」

あたりは暗く、私には20年前の景色を認識出来ないが、この老夫婦には色んな景色が見えていたんだろうなぁ。

夫婦の生活がスタートし、生まれた子供、育っていく子供、喧嘩した時、お出かけする時

そんな風景が思い出されていたんだろうなぁ。

 

お礼を言われてその場を後にした。

 

リュックサックにありえないほどのぬいぐるみをぶら下げた女性の優しさは私に優しさを分け与え、他の人達に伝播した。

 

だから席を譲って断られたことを気にすることは無い。

君のやさしさはもしかすると、この地球を救うほどの力を秘めている可能性がある。

だからその優しさを大切に持ち続けて、世の中の汚いものを見ても捨てないでほしいなぁ。

 

直接伝えられたら良いんだが・・・