初めて聞いた時
初めて音をブツケられる感覚
音楽を聞いたというよりなにか、ナイフを突き立てられているほどの緊張感と荒々しい高揚感、そして物凄い出会い頭の衝撃だった。
荒々しい
なんと荒々しい
ポップだパンクだロカビリーだとかそういったジャンルの次元を超えて「危険信号」を聞いているような、地震アラームを聞いたような緊張感が心の中を支配した。
新しいとか古いとか、音がとかメロディーがとか歌詞がとか、そういったものを超越している。
ただアンプに繋いで全開に音量を上げ、喉を擦り切れさせながら声を張り上げ、弦を命ごとピックで削っているような、そんな音をブツケられる。
「ハァハァ」と緊張感で口呼吸を自然にしてしまう
動悸がおかしい。
膝がガクつく
身体が危険を知らせている。
危ない、まさに「麻薬のようなノイズ」だ。
これはまともな音楽では無いのかも知れない。
赤坂にある広めのホールに「すごい、兎に角モノすごいから」と友人に言われて見に行ったライブにその存在はあった。
それからは脳内から「麻薬のようなノイズ」が離れない。
ありえないほどの高揚感をこのノイズは与えてくれる。
あれから20年ぐらいの時が経っているのに、その時の衝撃は脳内にコールタールのようにこびり付いている。
もうあの体験は出来ない。
ギターも早くに亡くなり、ボーカルも今月逝ってしまった。
ただ悲しくはない。
かっこいいなぁと思うと同時に羨ましくもある。
あれだけ光り輝いた一瞬を見せつけられた僕らをアッサリ置いて行く様は本当にカッコいい。
不謹慎と言われるかも知れない。
ただただカッコよかった。最高だった。
あの一瞬を、命の煌きを目の当たりにしたような体験させてくれたことが今でも私の生きる糧になっている気がする。
「ご冥福をお祈りします」ってのが一番似合わない存在かも知れない。
くたばるまでもがカッコいいだろ?最高だね。